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会員インタビュー

税理士法人久保田会計事務所堀井 結貴 1985年京都府宇治市生まれ。大学卒業後、不動産会社に入社。業務の過程で税理士に興味を持ち、2011年に税理士法人久保田会計事務所へ入所。財務事業部に配属され、主に月次、決算申告、所得税申告業務等に従事。2013年に経営支援事業部に配属され、MAS監査、経営改善業務を行い中小企業を支援。2015年に税理士資格を取得。

MAS監査業務に携わるようになったきっかけを教えてください。

MAS監査担当者になったのは2013年からなので、もう10年になりますね。もともとは税務担当として採用されたので、入社1年目は税務申告や試算表作成、決算組みなどの業務を行っていました。入社して1年半ほど経った頃、突然所長から呼び出されて「経営支援の部署に異動して」と言われました。ようやく業務が一巡して慣れてきたところの部署異動だったので、「え?なんの話?」と、とにかく驚きました。
ただ、経営支援についての率直な感想としては「おもしろそうだな」と思いました。というのも、お客様のところで決算報告を行う際、決算書を上から順番に読み上げて報告することが往々にしてあると思います。「ただ読み上げるだけで意味があるのだろうか?」という疑問もあり、「何がおもしろいんだろう」と思うことも正直ありました(笑)
経営支援の部門なら、ただ読み上げるのではなく、どのようなルートの売上が多かったのかを要素分解して報告したり、経費の中身の話やKPIの説明をしたりできるのかなと、イメージしてみたらワクワクしました。
異動してからは先輩社員に同行し、ひたすらOJTで学んでいきました。OJT以外では、「TAA(ターンアラウンドマネージャー):再生事業アドバイザー」だけは取得してほしいと言われ、その勉強をしました。SWOT分析やフレームワーク、税務、銀行の債権関係や法律に関わる部分を浅くではありますが網羅できる資格で、MAS監査担当者として必要な知識だったからです。それから徐々に業務の一部をメイン担当として任せてもらえるようになり、ひとりで訪問することも増え、約2年でいつの間にか独り立ちしていました。

MAS監査業務を通して、印象的だったエピソードはありますか?

印象的だったのは、MAS監査担当者になり3~4年目に出会った歯科技工士のお客様です。初めてお会いした時には、すでに資金がショート寸前でした。「はじめまして」から20日ほどで、「今月末の資金が足りない!」と連絡がありました。至急、銀行の融資が必要だったので、メインの金融機関を巻き込んで10日間で一気に計画書を作成しました。無事に融資が下り、社長から「おかげさまで首の皮1枚繋がりました」とお礼を言ってもらえた、という冷や冷やした思い出があります(苦笑)
先代から借金とともに会社を引き継いだ社長が、なんとか会社を潰さないようにと頑張っていましたが、どんどん資金がなくなって「もう無理だ」と限界を迎えていた頃に、偶然セミナーで知り合いました。そのような状況の会社でも融資が下りたのは、計画の作成段階から金融機関の担当者を巻き込めたことが大きいです。地場は3行ありますが、弊社はどの金融機関とも「将軍の日」やセミナーを共同で開催しています。毎月の「将軍の日」を通して定期的に関わりを持っているため、地場のどの金融機関にもそれなりに顔が利くので、そのおかげでどうにか助けることができました。

継続的に関係性を持っているお客様のなかで、思い入れの深いお客様はどのような方がいらっしゃいますか?

私がMAS監査担当者になったばかりの頃に、創業10周年を迎えた建設業のお客様ですね。当時、10周年の記念パーティーを開くとのことでお誘いを受けました。そのパーティーではごはんを食べて帰っただけなので、たいした思い出もないのですが(笑)、そのお客様が今年で20周年を迎えます。この10年間で社員の入れ替わりもありましたし、紆余曲折ありました。赤字が出た年も最高益の年もずっと見てきたお客様が、無事20周年を迎えられることは、一緒にやってきた身としてはとても嬉しいですし、「10年間頑張られたんだなあ」としみじみ思います。
現在は、ウクライナの戦争の影響でなかなか資材が入荷できず工期が遅れたり、物価上昇の影響で契約が切れてしまったりすることもあり、大変な状況が続いています。その状況を乗り越えるため、何ができるかを社長と営業部隊のトップがいろいろと策を検討されていますし、私にも相談が来ます。また、今期を黒字にすることも大事ですが、この先5年以内の事業承継を予定されているので、事業承継の支援も行っています。社長は、承継する際に会社の中身を良いものにして次世代に渡すことを第一に考えられています。良い時も悪い時も一緒にやってきたので、今後も支援していきたいです。

事務所の特徴・強みを教えてください。

今期からの取り組みで、最重要項目に挙げているのは「税務担当者もMAS監査や経営支援の目線を持ってお客様と接する」ということです。取り組みを始めた背景として、MAS監査担当先以外の顧問先の社長が会社の課題や悩みを相談できないという課題が、コロナ禍の影響で顕在化してきたことがあります。そこで、課題解決のために、経営支援目線を持てる税務・財務担当者を育成することになりました。それにより、税務と経営支援の部署を統合し、経営財務部という部署になりました。また、「経営会計サービス」を商品化しました。このサービスは、税務顧問先に通常の税務の時間内で簡易版MAS監査を行うサービスです。試算表報告で毎月訪問するので、目標管理やチェック、次回の行動目標、KPIの指標などの話をその時間で行います。基本的に実行支援や実行サポートはせず、予実管理まで踏み込む場合はMAS監査を契約していただきます。「経営会計サービス」は別途料金が発生しない税務顧問料の範囲内のサービスではありますが、値引きなしで行うことが前提なので、値引き契約を減らすことにつながっています。
風土としては「何でもチャレンジさせてくれる環境」ということが特徴として挙げられます。横着をして叱られることがあっても、チャレンジして失敗したことについては決して叱られることはありません。所長の久保田は、自分からチャレンジしたいという者がいれば、そこまで形になっていない提案でも話を聞いてくれて「やってみたら」と後押ししてくれます。もちろん、もともとチャレンジングな精神を持っている人もいれば、苦手な人もいます。自発的なチャレンジばかりを求められる環境であれば息苦しくなってしまう人もいるかもしれませんが、そういった提案が苦手な人には、トップダウンで少し責任ある業務や今までやっていない領域の仕事に挑戦させてくれるので、社内全体にチャレンジングな意識が浸透していると思います。また、人時生産性を高めることにも取り組んでおり、その達成率が昇給に直接反映される評価制度を取り入れています。また、「利益の何%は人件費に回す」と決められていることもあり、売上が上がれば上がるほど、残業を減らせば減らすほど賞与が増えるので、モチベーション高く人時生産性向上に取り組めていると思います。

MAS監査担当者としての中長期的な目標を教えてください。

事務所の中期目標は「全員がMAS監査をできるようになること」です。そのため、そのサポートをすることが私の中長期的な目標です。まずは税務時間内での簡易版MAS監査を事務所全体でできるようにします。この簡易版MAS監査をお客様に価値を認めてもらえるレベルまで担当者を成長させていくことが私の役割です。そのサービスがある程度できるようになってきたら、じっくり時間をかけ、適正な料金を頂くMAS監査に移行していきます。税務担当者とかMAS監査担当者とか、専任か兼任かという関与の形態はこちら側の考え方の話で、目の前の1社に対してどのようにアプローチするかという観点で考えたら、その垣根は重要じゃないと思います。もちろん、この方法では担当者のレベル感による提供内容のばらつきは起こりうるので、商品・サービスの型をつくってから担当者を教育するよりも標準化には時間がかかると思います。それでも、事務所のMAS監査の型や質を確立すること以上に、職員全員が経営目線でお客様に接していくことがお客様の価値になると考え、重視しています。
3~4年かけて本腰を入れて取り組めば、日常の会話・雑談の中にもお客様の将来についての話が出てくるようになって、職員の口から出てくる言葉が変化していくと考えています。日常が変われば、それはもう文化として根付いているということじゃないですか。そうすると、5年後に入社する新卒は「会計事務所の仕事ってこうなんだ」と、その環境を当たり前に受け取ります。そんな風土をつくっていくことが、目下の目標です。

最後に、顧問先の経営支援がなかなかうまくいかないという方にメッセージをお願いいたします。

まずはお客様のMAS監査の前に自事務所のMAS監査が大切です。顧問先にMAS監査を提供する際には、問題・課題の抽出やアクションプランの検討といった話をしますよね。それをまずは自社で行うべきです。結局やることは一緒ですから。自社MAS監査を通して同じ経験を有していることが強みになります。たとえば、自社MAS監査に取り組むうえで「人がついてこない」という問題が発生したとします。その場合、ついてこない理由・問題・課題を探して解消する必要があります。「人がついてこないからできません」と諦めてしまっては、顧問先にも同様の事態が発生した時に対応できません。あの手この手を使って必死に解決しようした経験があれば、その経験をお客様に還元することができます。
MAS監査に取り組み始める事務所様はだいたい2通りのパターンに分かれると思っています。代表自身が挑戦しようとする場合と、ナンバー2が取り入れたいと代表に伝える場合。どちらにしても、主な課題は一緒なんじゃないかと思います。新しいことに挑戦したい人がいる一方で、新しいことはあまりやりたくない人や現状に満足していて変化を好まない人は一定数必ずいます。いろいろな考え方を持った人がいて当然です。ただ、少なくとも、MAS監査サービスは悪いものではないですし、お客様に必要な仕組みであると私は思います。それを自社でできている会社もあれば、外注しないとできない会社もある。必要な仕組みを必要としている会社に提供することは大事なことではないでしょうか。
もうじきコロナ禍が明けます。顧問先の企業様も、新しいことに挑戦しないといけない、今までのことを見直さないといけないといった場面に来ているのではないでしょうか。世の中の流れとしても、伴走支援の重要性が取りざたされています。ということは、間違いなく、世の中に必要とされているサービスです。実践するにあたって、「この人の理解を得なければ進まない」というキーになる方がいるのならば、諦めずに説得して同じ目線を持つということをやっていってほしいと思います。
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