立石様がMAS監査業務に携わるようになったきっかけをお聞かせいただけますか?
私が税理士法人RINGSに入職した頃、すでに事務所は未来会計の方向にシフトしていました。当時の私は税務会計しか知らず、「未来会計? 経営計画なんてまったくわからない」という状態でしたので、「MAS監査は“できる人”がやる仕事、私にはできない」と思っていました。そんな私がMAS監査に携わるようになったきっかけがあります。それは平成27年に起こった3つの出来事です。この年を境に私は変わったんだと思います。1つ目は自社MAS監査の担当者になり、事務所の数値説明や会議運営をし始めたこと。2つ目は竹内日祥上人が主催する2日間の経営人間学講座を受講したこと。3つ目は岩永先生が主催するNBM研修会に参加したことです。未来会計に触れる機会を多く頂いた年で、平成27年が私にとって未来会計元年でした。
特に影響を受けたのが、経営人間学講座です。自社MAS監査の担当者になった当初、先輩や代表に怒られないように数値説明や会議進行をすることばかり考えていました。事務所のことを真剣に考えるでもなく、自己中心的な考えで事務所の会議を運営していたにもかかわらず、私は事務所に貢献しているつもりになっていました。そんな私の心を見透かすかのように、お上人様や中原事務局長は「君は価値観が高くない。むしろ低い」とおっしゃいました。その言葉にハッとし、いろいろなことに気付かせていただきました。
経営人間学講座では、「主体性」について学びました。主体性とは、「当事者意識」と「責任観念」を持つことを指します。相手の問題(他者、会社)は自分の問題であると捉え、その問題を解決するのは自分であるという考え方です。私にはこの考え方が欠けていたと気付きました。なぜ今までこんなにも自分勝手に物事を考えてきたのだろうと思いました。代表や事務所のみんなに支えられていたおかげで成長できていたことに感謝し、自分にできることは自社MAS監査を通して事務所に貢献することだと思いました。その気持ちで自社MAS監査に臨むと覚悟を決めました。それ以降は自社MAS監査に自信が持てるようになりました。そして、お客様にもMAS監査を提供してみたいと思うようになりました。その後、NBMに参加して全国の参加者に刺激され、研修で学んだことや他事務所の事例を参考にしながら取り組みました。
平成27年は、神様が「あなたはMAS監査をやるべきだよ」と後押ししてくれたかのような、未来会計に触れる機会を多く頂いた年でした。
これまでMAS監査を提供してきたなかで、強く印象に残っているお客様はいらっしゃいますか?
やはり、初めて自分で成約をとれたお客様は印象深いです。平成28年12月に不動産業のお客様から初契約を頂きました。このお客様は弊社で開催している経営者塾(4回コース)の受講生でした。私は4回会うだけでは関係性が深まらないと思い、受講中12回程度会えるような仕組みをつくり、少しずつ信頼関係を築いた結果、成約に至りました。
弊社では、MAS監査先の経営理念や事業定義を尊重して経営計画を策定します。このお客様も成約後に経営計画の策定を行いました。行動計画を立てている時、社員の方々が「時間がないからできない」、「本当にやる必要があるのか」という雰囲気になりました。その際、「会社の事業定義・経営理念はこうですよね。この定義・理念からするとやるべきことじゃないですか?」と投げかけたところ、「私たちの事業定義ってそうだよね」「これはやるべきことだよね」と納得してくれて、そこから話が盛り上がりました。また、立案終了後の感想を共有する場で、「立石さんが担当になってくれてよかった」と言ってもらえました。経営計画策定支援のやりがいを最初に教えてくれたお客様です。
MAS監査を始めたばかりの頃は、組織として会議体を持たず、何かあればその場その場で社長のトップダウンで対処しているような会社でした。社長にやりたいことがあっても共有の場がないために結果が伴わないことが多く、「実行力の底上げ」というところに課題を持っていました。業績も4期連続マイナスでした。ところが、経営計画を策定し、目標と行動計画を明確にし、毎月の会議で自社の課題をみんなで確認するようになってから、半期でマイナスからプラスに転じました。ビジョンやあるべき姿はもともと明確に持っていた会社だったので、それを数値や行動計画に落とし込むフォローをしたことですぐに成果につながりました。このお客様は今も担当していて、今年で6年目です。MAS監査契約後は5年連続黒字を実現しています。
事務所の特徴について教えてください。
弊社の特徴は5つあります。1つ目は、弊社のMAS監査は理念経営をベースに展開されていることです。まずは経営理念、そしてそれに対するビジョン・あるべき姿を描きます。ロケット理論のとおりに、あるべき姿を明確にし、そこから逆算で考える方法で行っています。
2つ目は、兼任体制にしていることです。「MAS監査先の決算も全部自分で組むのは大変ではないのか?」と聞かれることがありますが、2つの理由で今は兼任制にしています。1つは未来会計を標準業務であると捉えているからです。税務会計業務をマスターし、未来会計ステージに到達した社員がMAS監査を行います。税理士法人が取り組む経営支援業務であるところに、価値を見出しています。もう1つの理由として、税務監査を兼任することによって、仕訳の中身までチェックできるのでお客様の財務状況をより深く知ることができます。効率性と効果性を踏まえ、弊社では兼任制が一番良いと判断しました。
3つ目は、月末に未来会計研究会を実施していることです。未来会計研究会では未来会計の戦略を検討していて、日程は1年以上前から決まっています。忙しいので本当はこの日にMAS監査や税務監査を入れたい気持ちはあります(笑)。ただ、この研究会がクオリティタイムになっていて、集客や今後のMAS監査をどうするかなどMAS監査担当者全員で話し合う大切な時間です。この時間があるからこそ、未来会計に本気で向き合っていくことができるのだと思います。
4つ目は、自社MAS監査です。弊社では自社MAS監査がMAS監査の練習の場になっています。現在は担当者2名で自社MAS監査を実施しています。一番身になるのがこの自社MAS監査です。実際、担当者の2名は日々成長しているので、今後その2名がお客様を持つことになればとても頼もしいです。自社MAS監査は成長支援の一環でもあります。
5つ目が、RINGS式成長支援システムです。弊社では「成果」「能力」「情意」の3つで評価し、成果だけでは評価の総合点が上がらない仕組みになっています。考え方や日々のコミュニケーション内容、挨拶の仕方などの情意的な部分も加味されて評価されます。上長は能力だけでなく、価値観の成長も支援します。今後さらに成長してほしいという想いを込めて、このような評価方法になっています。
立石様の中長期的な目標を教えてください。
私は業界No.1のMAS監査担当者を目指しています。高い目標ではありますが、秋田県No.1よりも業界No.1を目指すほうが、ずっとモチベーションが上がるように思いました。だから、目指すは業界No.1です。この業界で「立石さんといえばMAS監査」「MAS監査といえば立石さん」と言われるようになりたいです。
また、目標達成するうえで事務所と私の成長がリンクしていないと意味がないと思っています。事務所の10年ビジョンとして「MAS監査売上高3億円」という目標があります。この目標達成に向けて行動し続け、お客様への貢献を通して自分自身を高めていければ、自然に業界No.1の実力を得ることができると思います。そして、事務所が業界初の「MAS監査売上高3億円」を達成できたなら、その達成に貢献した個人も業界No.1と言ってもらえる可能性が高いと思っています。事務所とともに業界No.1になりたいです。また、今後はMAS監査だけでなく、体感型の研修の構築など新しいことにも挑戦していきたいと思っています。
MAS監査担当者の方へメッセージをお願いします。
私がMAS監査担当者になれた理由は3つあります。1つ目は、事務所に経営計画があったことです。事務所単位で「未来会計や経営支援を頑張ってやっていくぞ」というビジョンがあるので、MAS監査や経営支援がスムーズにできました。
2つ目は、自社MAS監査の担当者になれたことです。自社でMAS監査を実践していて、なおかつ自社MAS監査の担当になったことで、お客様に提供する前にMAS監査の練習ができました。未来会計の推進がうまくいっていない、これから取り組んでいきたい場合は、あるべき姿や10年ビジョンを事務所全員で作ったほうがいいと思っています。自社のあるべき姿すら見えていないのに、お客様にMAS監査を提供しようとしても絶対に長続きしません。まずは、ビジョンを明確化することと自社MAS監査をすることです。1年間自社で実践してみて、事務所の皆さんが「うちの自社MAS監査っていいよね」と言えるくらい充実した自社MAS監査になれば、私のように気持ちの下準備ができ、自信を持ってお客様にMAS監査を提供できるようになります。
そして、3つ目の理由は価値観の勉強ができたことです。問題を特定するためには分析が重要ですが、分析結果は問題を解決してくれません。分析から導き出した課題を価値に転換し、解決できるのは人間の思考力と価値観です。MAS監査はまさに、思考と価値観を共有する場です。その意識で実践すると、テクニックは必要ないと思います。MAS監査担当者として必要なスキルは、課題を引き出す力だと思います。相手の話を素直に聞いて、たとえ間違っていると感じることがあったとしても受け入れて、相手の目線に立って質問できるスキルです。そのスキルがあれば、MAS監査は成り立つと私自身は思っています。お客様を良くしたい想いがあり、MAS監査が思考と価値観を共有する場だと自分自身が納得すれば、問題を解決に向かわせることができるようになります。
繰り返しになりますが、重要なことは、まずはMAS監査ができる体制を自社に作ること。自社MAS監査も思考と価値観を共有する場と考え実践すること。自事務所の問題が解決すると自社MAS監査が良いものだと絶対思えるはずなので、その想いでお客様にも提供していくことです。ぜひ、MAS監査体制を構築し、共にお客様へ貢献していきましょう!