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会員インタビュー

株式会社ケーエフエス齋藤 健太 1983年生まれ、宮城県塩釜市出身。
2010年小島会計事務所(現税理士法人ケーエフエス)入社。一般法人、社会福祉法人、公益法人等様々な会計、税務顧問先を担当するのと同時に、未来会計業務に取り組む。
将軍の日・MAS監査の標準化と、特化MASの商品開発を通して、ケーエフエス、ひいては会計業界における経営支援部門の事業化に取り組んでいる。 得意分野は経営計画策定とマーケティング戦略構築、運用。
趣味は日本酒と古墳。「論語と算盤」の考え方を行動指針としている。

齋藤様が株式会社ケーエフエスに入社したきっかけを教えてください。

私がケーエフエスに入社したのは2010年の2月、ちょうど10年前のことです。私は、両親が個人事業の飲食店経営をしていたこともあり、子どもながらに経営の苦労というものを見て育ちました。「一生懸命にやっているのに思い通りにいっていない……」そのような人たちの役に立ちたい、何か良くなるきっかけはないかなと思っていました。それができる業種は何だろうと考えたときに、士業という選択に行き着きました。なかでも、会計事務所への就職を希望し、就職先を探しているときに、当社に対し他の事務所にはないおもしろさを直感的に感じたのです。今思えば、それが未来会計だったのだと思います。

MAS監査業務にはいつ頃から携わられたのですか?

入社してすぐに、代表の小島に付いてMAS監査業務を担当するようになりました。中途でこの業界に入って、会計業界に対するイメージがあまり固まっていない状態だったので、最初からそれほど抵抗なく始められましたね。初めての受注は、税務顧問先に将軍の日にお越しいただきニーズを喚起してMAS監査を受注するという流れで、今もこの流れが基本であることは変わりません。
業務に対する抵抗はなかったとはいえ、税務監査より作業量はかからないのに税務顧問報酬よりも高い料金を頂くという点に、「MAS監査にはそれだけの価値があるのか」と少し悩んだ時期もありました。当時、商品に対する自信が揺らいでいたのは、商品定義があいまいで何を提供すればいいのかわからないことが原因でした。2~3年くらいかけて試行錯誤し、「何をやって何をやらないか」を決定し、業務それぞれの単価を明確にしました。商品定義を作りこんだことで自信を持ってお客様に提案できるようになり、その頃から受注件数が伸びていきましたし、「標準化」という新たなステップも見えてきました。
やることは数えあげればきりがないほどあるので、やらないことを決めるのが特に重要だと思います。お客様の課題に対してあれもこれもと提案したり対応したりしていると、いくら時間があっても足りないうえに、お客様も何に対してお金を払っているのかがわからなくなります。提供する側が自信を持って提案するためにも、お客様が納得してその提案を聞くためにも、商品定義を明確にすることは意味があると思います。

「標準化」は多くの事務所の課題のひとつだと思います。どのような点に留意して取り組んでいらっしゃいますか?

これから先、税務部門は完全になくなることはないですが、縮小傾向にあることは間違いありません。今の業務は続けられない人が出てくるでしょうし、続けていられたとしても今よりも給与が下がるということも考えられます。そうならないように、今後5年くらいかけて、現在は税務部門のみに携わっている人もMAS監査をできる体制を作っていく必要があると思っています。
そのような考えのもと、当社の場合は「税務担当者が兼任でできるモデル」を標準モデルとしているので、効率性を追求し生産性を高めるために、先程お話しした「やらないことを決める」というのがひとつのポイントです。当社の基本のMAS監査は、Plan-Do-Seeの「See=検証と軌道修正」のみを行い、来所型で2時間5万円です。使用するツールは固定、どの指標を見る・見ないというところまで定めることで、再現性を高め、品質を担保しています。
PlanとDoの部分に関しては、Planは将軍の日、Doは特化MASとしてそれぞれ別単価で、基本の月次サービスに組み込めるようにしています。ベースは属人化させない体制を作りつつ、お客様のニーズに合わせて独自性を発揮できる部分で付加価値を提供して単価アップも可能というラインナップになっています。

今年に入り新型コロナウイルスの感染拡大が社会に大きな変化をもたらしましたが、顧問先の支援についてはどのように変化しましたか?

コロナ禍においては、中期計画からの逆算より、資金繰りに重点を置いた短期計画からの逆算で戦略を考えることが圧倒的に増えました。当社のお客様は飲食やサービス業などの特に影響を強く受けている業種が多いこともあり、先がまったく見えず「3年先、5年先の計画どころではない」という声が多くなったことは事実です。不確実性が高過ぎて現実味を持てない計画では行動につながらず、行動につながらなければ数字はついてこないし、検証しようもありません。「明日生きるために何をするべきか」といった危機的な状況においては、中期計画から逆算したアクションプランよりも、半年後、1年後に生き残るためのアクションプランを立てたほうが実効性は高いと考え、現在は短期的な戦略にシフトしています。
また、このような状況下で、従来型の会計事務所が売りたいものとお客様が求めているもののギャップがますます浮き彫りになったと感じます。というのも、当社がここ最近、新規に税務顧問契約を獲得したお客様へのヒアリングで、「今までの会計事務所は何もしてくれない、何も知らないことが不満だった。情報量が多く、いろいろ取り組んでいる事務所だから切り替えた」とおっしゃる方が明らかに増えました。私は、今のお客様のニーズを「資金繰りの安定や経営の安定」「経営にまつわるお金のプロに相談したい」だと思っています。このようなお客様のニーズに応え、顧客流出を防ぐには、税務会計だけでなく、財務やキャッシュフローの勉強に力を入れて、お客様が求める資金繰りの支援や経営支援をできるようになる必要があります。お客様のニーズを理解したうえで、自分たちは何を提供するのかを考えていかないといけないと常に思っています

齋藤様のMAS監査担当者としての中長期的な目標を教えてください。

標準化の話の際に少し触れましたが、税務部門はかなりニッチな部門として生き残り、大多数の人はこのままでは食べていけなくなる……これは当社だけでなく、業界全体の問題だと思っています。「税務担当者がMAS監査をできる体制づくり」に以前から取り組んでいる当社は、事例を多く持っているほうだと思いますし、参考にしていただける部分もあるのではないかと思います。当社の兼任制モデルをさらに推進していき、必要としている事務所の方々に幅広くノウハウの提供をしていきたいと考えています。
また、今お客様との関わりのなかで大切にしていることが、「お客様にとってCFOの役割を担う」ということです。外の人間ではなく、中の人間。お客様にとって内部のパートナーとしての立ち位置で財務や戦略を共に考えるというポジションを確立したいと考えています。現在、月20万円の契約で実際にサービス提供をしているお客様の例を挙げると、基本のMAS監査に加えて、別途月1回の時間を設け、マーケティング戦略支援を行っています。集客、売上、納品の仕組みの構築や戦略の実行管理までサポートし、その他にもWEBで30分程度のミーティングを毎週行い、パートナーとして戦略や財務の相談にのっています。月20万円という金額を捻出する場合の判断基準は、「正社員1人雇うかどうか」が指標になっているのではないかと思います。外部から実績のあるCFOを招き入れるとなると20万円では済みません。CFOを20万円で雇えるなら安いですよね。
そのCFOというポジションを、生産性を確保したうえで築いていくことが現在の課題です。人は自信がないほど時間をかけて、自分がやっていることを正当化しようとするものだと思います。私も昔はそんな節があったと思います。時間をかけることで「この人は一緒にいてくれる、本気で取り組んでくれる」とお客様の満足度につながることはありますが、お客様の成果につながるかはまったく別問題です。パートナーとして選んでもらっているからには、成果を上げるというパフォーマンスで応え、それに見合った対価をきちんと頂く、そのような関わり方が重要です。この課題を克服しながら件数を増やしていき、新しい価格戦略として確立し、いずれは会計業界の価格戦略モデルのひとつとして参考にしてもらえるようになればいいなと思っています。

顧問先の経営支援に取り組みたいけれどうまくいっていない事務所、あるいは担当者の方へメッセージをお願いします。

私は今いろいろと取り組むにあたって、「構え、撃て、狙え」という言葉を大切にしています。構えて、狙ってから、撃つというのが通常のパターンだと思うのですが、私は「まずやってみる、それから改善する」ということを心がけています。「撃つ」までの時間が長くなればなるほど、リスクを見つけたり、まだまだ準備が不十分だと尻込みしたり、やらない理由を見つけてしまうものです。会計業界は特に慎重な方が多いからか、「未来会計は良い考え方だ、今後の会計事務所の本来業務だ」と考えて勉強や下準備をするけれど、失敗を恐れて行動に移せない人も多いと感じます。私は「失敗できない、間違えてはいけない」という考え自体が誤解なんじゃないかなと思っています。未来会計は従来の税理士業務とは価値の基準が異なります。お客様に役立つ経営情報を提供できるかというのは、数字の正しさとは別次元の話です。一度や二度間違ったって、それ自体は問題ではないと私は思います。
AppleやGoogleのような超一流の企業ですら、常にバージョンアップを繰り返しているじゃないですか。それは、作った時点では完璧ではないということですよね。それでもまずはリリースして、世の中に利便性を提供しています。我々もそのような意識で取り組めばいいのではないかと思います。まずは一度やってみて、検証したら問題点がたくさんあるかもしれない。大切なのは、それをどう改善・バージョンアップしていくかです。
そして、MAS監査を提供する側の我々が、成功も失敗も含めてPlan-Do-Seeを回し続けることが大事です。我々自身がモデルケースとしてMAS監査の有用性を証明するためにも、Planだけでなく、Do-Seeまでやりましょう。構えて、撃ってから、狙う。そんな風に、私も皆さんと一緒に切磋琢磨していきたいと思います。

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